スクシノグリカン
スクシノグリカンとは、微生物アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)がブドウ糖などを栄養源として菌体外に分泌した多糖類を、回収・精製して生産される多糖類です。構成成分にコハク酸(Succinic acid)を含有することからスクシノグリカン(Succinoglycan)と命名されました。
1.構造
スクシノグリカンは、右図に示すような繰り返しの単位からなる多糖類です。
主鎖に4糖、側鎖に4糖の繰り返しユニットを構成し、側鎖にピルビン酸とコハク酸を持つためマイナスの電荷を帯びています。構成成分の比率はグルコース:ガラクトース:コハク酸:ピルビン酸が約7:1:1:1で、分子量は100万程度と考えられています。
2.製造工程
スクシノグリカンは、糖類を原料に発酵することで生産されます。発酵後、回収、精製、乾燥粉砕され製造されています。
3.特性
溶解性
冷水に分散、膨潤し、粘度発現しますが、均一な溶液を得るためには、加熱する、もしくは強力な攪拌を行うことが推奨されます。
粘度
低濃度で高粘度を発現します。
流動性
極端なシュードプラスチック性を示します。
温度の影響
多くの多糖類水溶液は液温が低いときは粘度が高く、液温が高くなると徐々に粘度が低下します。スクシノグリカンは60~70℃を境に大きく粘度低下する特徴を持っています。この変化は可逆的で、また転移温度は塩濃度が高くなると高温側にシフトする性質があります。一方、キサンタンガムの水溶液では、液温の高低に関わらず粘度はほぼ一定を示します。
4.応用例
相乗効果
ガラクトマンナン及びグルコマンナンと相乗性を示し増粘しますが、その程度は非常に弱いです。これまでに顕著な相乗作用を示す多糖類は報告されておりません。この性質のためスクシノグリカンは加工食品中で予期せぬ増粘・ゲル化を起こさず添加効果を設計しやすい多糖類です。
乳との相性
多くの多糖類はたんぱく質、特に乳たんぱくとの相互作用が見られます。特にキサンタンガムでは乳たんぱく等が共存すると凝集が起こります。一方、スクシノグリカンはその程度が非常に弱いため、乳製品分野において有用です。
ソフトヨーグルトの顕微鏡写真(×16)
スクシノグリカン添加品
キサンタンガム添加品
食品への応用例
対象食品 | 使用量 | 使用効果 |
---|---|---|
乳製品(ホイップクリーム、ソフトヨーグルト、ドリンクヨーグルト) | 0.03~0.2% | テクスチャー改良(適度なボディ感を付与しながらもすっきりとした後口)、保型性を付与することができます。 |
飲料 | 0.03~0.2% | テクスチャー改良(適度なボディ感を付与しながらもすっきりとした後口)、固形物の沈降を防止します。 |
冷凍食品 | 0.1~0.4% | クリーミーなテクスチャーのグラタンや凍結解凍により生じる分離・組織の荒れが少ない低脂肪マヨネーズを作ることができます。 |
ドレッシング類、低脂肪マヨネーズ、ケチャップ | 0.05~0.4% | 粘度を付与しながらもフレーバーリリースに優れ、すっきりしたテクスチャーの調味料を作ることができます。 |
ねりがらし、ねりわさび、ねりしょうが | 0.05~0.4% | 醤油等の液体への分散性が良く、フレーバーリリースに優れた物性を付与します。 |
タレ・ソース・つゆ・あんかけ類 | 0.05~0.3% | とろみ付け、固形物の懸濁安定、調味液の分離防止、具材への付着性向上、テクスチャー改良(すっきりとした口当たり)に効果があります。 |
小麦粉製品(クッキー、スナックバー、パン、ケーキ類) | 0.05~0.2%(対小麦粉) | きめ細かく崩れるテクスチャーのクッキー、スナックバーを作ることができます。作業性や加水率の向上、膨らみ増大に効果があります。 |
果実加工品 | 0.05~0.4% | 粘度を付与しながらもフレーバーリリースに優れ、すっきりとしたテクスチャーを付与します。 |
とろみ調整剤 | 10~50%(対粉) | 水、お茶にとろみを付けます。その後口はすっきりとしています。 |