アラビアガム
アラビアガムとは、アフリカ北部やスーダン等、北緯10度から20度の間に広く分布するアカシア属セネガル種(Acacia senegal)の樹脂から得られる多糖類です。
アラビアガムは優れた乳化安定効果、フィルム形成能を持つため、主に医薬・食品分野で乳化香料や粉末香料の調製、油性ビタミンのマイクロカプセル化、キャンディーのコーティング、錠剤のバインダー等に使われています。
1.構造
アラビアガムはポリウロン酸と呼ばれる構造を持つ多糖類です。
構造は主鎖にガラクトース、側鎖にガラクトース、アラビノース、ラムノース、グルクロン酸を持ちます。
負の電荷を持つ水溶性高分子に分類され、分子量は約25万とされており、水溶液は低粘性を示します。
2.製造工程
栽培から5~7年ほど経ったアラビアガム樹木の樹皮を特殊な斧で剥ぎ取ります。この処理をタッピングと呼びます。タッピングによって樹脂状のアラビアガムが浸出するので、浸出から3~6週間後に塊状のアラビアガムを回収します。回収後は不純物や色調等を元に等級ごとに選別され、高級のものは食品や医薬品添加剤として使用され、低級のものは工業向けに使用されます。
商品形態としては塊状、粗砕品、スプレードライ末、顆粒等があります。
3.特性
溶解性
冷水可溶で50%以上の高濃度に溶解できます。
粘度
20%水溶液で100mPa・s以下と、非常に低い粘度を示します。
乳化安定性
アラビアガムはアラビノガラクタンタンパク(AGPs)と呼ばれるたんぱく構造を持っています。乳化系内ではアラビアガムはAGPs部位で油滴に吸着し、その周囲に膜を形成するため油滴の合一を防いでいると考えられています。この吸着は「Wattle Blossomモデル」と呼ばれる構造をとり、アラビアガムの乳化安定性に深く関わっていると言われています。
アラビアガムは高い優れた乳化特性を持ち、酸性条件でも安定であることから、特に飲料に加える香料の乳化剤として広く使用されています。また、アラビアガム自体が各種の飲料成分に対しても比較的安定で、不溶化等の不具合が起き難い点も利点となっています。
コーティング
他の多糖類と比較して、フィルム形成能に優れているため、菓子等の糖衣コーティング等に利用されています。
4.応用例
食品での使用例
乳化香料、粉末香料、チョコレート・キャンディーのコーティング、マイクロカプセル等
パーソナルケア
スタイリング剤、口紅・マスカラ・ファンデーションのバインダー、顔料の分散安定化等