引用文献1: Trowell H. : Crude fibre, dietary fibre and atherosclerosis, Atherosclerosis, 1972 Jul-Aug;16(1), 138-140
引用文献2: HIPSLEY EH. : Dietary “fibre” and pregnancy toxaemia, Br Med J. 1953 Aug 22; 2(4833), 420-422
引用文献3: CODEX ALIMENTARIUS Guidelines on nutrition labelling CAC/GL 2-1985
食物繊維とは
食物繊維は多くの食品に含まれており、人々が古くから食してきた成分の一つです。“食物繊維”という言葉の元となった“Dietary fibre”(注釈) は、1972年、Trowellが提案した考えで、その定義は“人の消化酵素の作用を受けない植物細胞の構造残渣”というものでした。
“Dietary fibre”=“食物繊維”という翻訳が適切か否かについては、日本国内でも議論がされており、近年では、今まで“食物繊維”と呼ばれてきたものを含む言葉として“ルミナコイド”という言葉も提案されています(1, 2)。“ルミナコイド”とは、2003年に日本食物繊維研究会誌にて発表された考えで、食物繊維を始めとする生理作用を有する全ての難消化性成分を含む新しい考え方です。これには今まで、食物繊維と言っていいの?と言われてきた難吸収性、または難消化性の糖アルコールや、難消化性のオリゴ糖のような低分子化合物も含まれています。
Trowellが“Dietary fibre”という言葉、考え方を提案してから40年以上がたった現在、研究の進歩によって、“Dietary fibre”と考えられる物質の範囲は拡大され、当時よりもより多くの高分子化合物が含まれるようになりました。しかしながら、どこまでが“Dietary fibre”と呼んでいいのか?という問題については各国で意見が分かれており、決着がついていません。様々な“Dietary fibre”という考えの中、ほぼ共通して言われている内容は“難消化性化合物であり、人間の健康に有用な効果を持つもの”という点です。
なお、一般的に多糖類と称される物質の多くは食物繊維であるとされています。
“日本食品標準成分表第七訂” (3)では「食物繊維とはヒトの消化酵素で消化されない食品中の難消化性成分の総体」とされています。また、日本の食品表示法では、その呼び方は“食物繊維”とされており、その表示については“推奨表示”の分類とされています。“推奨表示”は、表示の義務はありませんが、表示を行う場合には食品表示基準に沿った方法で表示する必要があり、その含有量の評価方法も決められています。測定方法はプロスキー法、または高速液体クロマトグラフ法(4)とされており、実際の測定ではAOAC(Association of Official Agricultural Chemists)の公定法(AOAC法)が広く用いられています。
また、平成15年2月17日付の厚生労働省(当時)通知によると、食物繊維の熱量(カロリー)は最大でも1gあたり2キロカロリーであると定められています。
食物繊維の熱量についてはこちら
食物繊維は通常、食品素材として扱われますが、特定の機能(増粘等)を目的として使用する場合には、食品添加物として表示が必要になる場合があります。
* 注釈
本稿記載の“Dietary Fibre”はイギリス英語となり、アメリカ英語表記では“Dietary Fiber”となります。どちらも同じ意味ですが、日本で一般的に使用される英語はアメリカ英語のため、「“Fiber”の方が分かり易い」と言う方も多いと思います。しかし、本稿では初めて“Dietary Fibre”という単語を用いたEben Hipsley氏、及び現在の“Dietary Fibre”の概念の基礎を築いたHugh Trowell氏に敬意を表し、当時の論文(1)(2)から引用し、“Dietary Fibre”として記載を行っています。
また、食品の国際規格CODEXにおいても、その記載は“Dietary Fibre” (3)となっており、国際的な単語の使用としても“Dietary Fibre”が適当と判断し、使用しました。ちなみに、Eben Hipsley氏はオーストラリア大学、Hugh Trowell氏はイギリス人であることから、イギリス英語で論文が書かれたのだと考えられます。